例えば指先を針で刺したとき、「チク!」と痛みを感じるのは、指先のはず。ところが実際には、痛みや触覚などの皮膚感覚は、視覚や聴覚、嗅覚、味覚と同様、「脳」が感じている感覚です。このしくみがどうなっているのか見てみましょう。
指先を針で刺したとします。そのとき、刺した部分の細胞は壊れてしまいます。すると、その細胞から、カリウムイオンやセロトニン、アセチルコリンといった「発痛物質」が出ます。この物質が知覚神経の末端(自由神経終末)に達すると、その刺激は今度は電気信号という形に変化して、「脊髄」と「視床」という部分を経て、大脳皮質の「体性感覚野」に届きます。この体性感覚野では、痛みの信号がどこから来たかによって、それぞれに対応する神経細胞が反応します。こうしてはじめて「右手の人差し指が痛い!」などの感覚が生じるのです。
つまり、発痛物質は自分で作り出しているのです。腰痛などの腰や背中の痛みは、自らの脳の指令で生成された痛み物質によって引き起こされています。
では、なぜその物質を作り出す指令を脳が出すのでしょう。
それは自分の体を守る防衛本能です。